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後日談:車山と北横岳へ続く、写真家たちの小さな旅

イベントが終わった翌日、イルコさん、美坐香菜子さん、そしてジョンさんの3 名は、「もう少しだけ雪の世界にいたい」という気持ちから、静かに車山の山頂を目指しました。
霧ヶ峰の主峰であるこの山は、登山口から40 分ほどで山頂に到達できる比較的なだらかな山で、初心者でも安心して登ることができます。今回は経験者が同行していたため、天候にも恵まれた穏やかな軽登山となりました。

山頂に立つと、目の前に広がるのは360 度のパノラマビュー。遠く八ヶ岳連峰、美ヶ原、浅間山を一望する絶景が広がります。車山神社には、諏訪大社の御柱と同じように、小さな御柱が立ち、静かに旅人を見守っていました。
その神聖な空気の中で、ジョンさんにはちょっとした“いいこと” があったそうです──詳しくは語られませんでしたが、自然の中で心がふっと軽くなる瞬間というのは、確かにあるものです。霧ヶ峰の大地には、どこか目には見えない何かが宿っている、そんな気さえしてきます。

そして翌日、さらに足を延ばした3 人は北横岳へ。標高2,480m、ロープウェイで標高2,237m までアクセスできるこの山は、冬でも比較的登りやすく、多くの登山者に親しまれています。しかしこの日は、山頂付近に強風が吹き荒れ、撮影を試みたライトスタンドが風で煽られるほどの天候。体感温度はマイナス20℃近く、手袋を外すのもためらわれるような寒さでした。
それでも、途中の「坪庭」と呼ばれるエリアに広がる一万坪の雪原では、凛とした空気と静寂の中での撮影が叶い、忘れられない時間となりました。風景は美しく、誰もいない静寂のなかにシャッター音だけが響くひとときは、まるで自然と対話しているような感覚さえ覚えます。

今年の冬は終わりを迎えましたが、来年の2月には北横岳の樹氷がもっと発達した時期に、そして3月にはもう少し気軽に楽しめる入門的な冬山撮影として、再びこの場所を訪れたいと思っています。氷と雪の季節には、特別な光が宿るのです。

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